特許法の基礎|現役弁理士が要点を徹底解説

初心者向け

特許法って難しいと考えたことはありませんか?実は、私は弁理士を目指し勉強を始めたときに、特許法は難しいなあ、と思いました。なぜなら、重要な条文がどこにあるかわからず、やむくもに最初から順に勉強していたからです。

私は、弁理士試験に合格した経緯があります。条文の順に沿って勉強し、非効率な勉強法をしたときがあります。また、法律書は、全てを説明しており、何が重要かわかり難いと思います。まずは要点を先に理解すべきと思いました。

この記事では、特許法を要点をわかりやすく説明します。

この記事を読むと、特許法の要点を理解できます。要点を抑えることで、特許法について理解が深まります。

では、早速、重要な条文を抽出し、要点を説明します。

特許法の目的(1条)

特許法とは、1条に全てが記載されています。つまり、「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。」ものです(特許法第1条)。

特許法の原点が、特許法1条に集約されていることがわかります。何か法律の解釈で不明になった場合は、特許法第1条の目的で考えると理解がし易いと思います。

特許権の発生前

まずは、特許権が発生する前の段階の条文がはじめの方にあります。これらのうち、最も重要な条文を説明します。

特許出願(36条)

36条は主に特許出願とは何か?書面として、どのように書くべきか?が書いてあります。

特に重要なのが、明確性要件(36条第6項第2号)、サポート要件(36条第6項第1号)です。

明確性要件(36条第6項第2号) は、特許請求の範囲に記載する内容が明確であることが求められています。例えば、曖昧な文言、約、ほぼ、などの文言はNGです。また、何が書いてあるのかわからない、日本語として理解できない記載もNGです。

サポート要件(36条第6項第1号) は、特許請求の範囲に書いている発明について、詳細な説明に記載している必要があります。サポート要件違反となると補正が難しいので、出願時にしっかりと書いておく必要があります。

新規性(29条第1項)

特許要件のうち新規性の要件(29条第1項)は重要です。29条第1項は、世の中に出ていない発明に特許を与えるということを明記しています。

新規性の要件(29条第1項)の要点は、発明が新規であることが要求されています。日本も含め世界規模で、新規か否かが問われます。新規か否かの判断は、特許出願時点を基準に考えます。

なお、29条第1項1~3号の条文の日本語が難しいのですが、29条第1項1~3号は、この内容は特許権付与しませんよ~という例が書いています。

進歩性(29条第2項)

進歩性の要件(29条第2項) は、かなり重要です。特許である意味が「進歩的であること」と言ってもいいでしょう。発明が進歩性を有するか否かは、人によって考えが違うので、拒絶理由通知で、最も通知される拒絶理由です。

進歩性の要件(29条第2項) の要点は、新規性があった発明であっても、発明が進歩的でなければ特許権を付与しませんよ~ということが書いてあります。

なお、29条第2項も、日本語としてはややこしい書き方です。要点は、「容易に発明をすることができたとき」は、「特許を受けることができない。」ということです。

先願(39条)

先願(39条)は、早い者勝ちですよ~という内容がかいてあります。細かいところで同じ日に2人が出願したらどうなるんだ?ということも書いてあります。ちなみに、同一発明の比較対象は、特許出願の「特許請求の範囲」です。

拡大先願(29条の2)

何が拡大されているのか?つまり先願の方が、より有利であり、地位が拡大されているというイメージ感じです。

後の出願の「特許請求の範囲」の内容が、先願の「特許請求の範囲」だけでなく「明細書」や「図面」に書いてあったら、後の出願の方は、ダメですよ(特許権を与えませんよ)~という内容が書いてあります。

補正要件(17条の2)

出願してから、どの時期に、どんな補正をすることができるのか?が書いてあります。細かいところですが、実務で非常に重要です。

最も重要なのが、特許出願に書いていないことを、新たに加える補正(新規事項)はダメですよ~ということです。これを考えると、特許出願時に、たくさん多くのことを書かなければならない、となるわけです。

特許権の発生後

特許査定となり特許権が設定登録されると、どのような決まり事が必要でしょうか?重要な条文を説明します。

特許権の重要条文(68条、70条)

特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有することが68条で定められています。

また、特許発明の技術的範囲は、「特許請求の範囲」の記載に基づいて定めなければならない点が70条に記載されています。つまり、特許請求の範囲は、権利侵害か否かを判断する基準となり、とても重要な記載事項になります。

特許権侵害事項(2条第3項、100条、101条)

特許権の侵害とは、正当な権原ない者が、業として特許発明を実施することにありますが、その実施について定義したのが2条3項各号になります。

また、100条に、特許権者等は、侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる点が記載されています。この権利を差止請求権と言います。特許権の侵害者となる相手が商売として実施できないようにすることができる、とても強力な権利です。

また、101条に、間接侵害について規定されています。

特許権を潰す規程(113条、123条)

条件を満たせば、特許権をつぶすことができる規定があります。主に、異議申し立て制度(113条)無効審判(123条)を行うことで、特許庁の方で、認められれば、特許権をつぶすことができます。

なお、特許権者には、つぶされないようにするために、訂正の機会が与えられます(126条など)

まとめ

・特許法は、特許権の発生前と発生後で考えるとわかりやすい

・重要な条文を先に理解すると特許法の全体像が理解でき、個々の条文も理解しやすい