中国の特許制度について説明します

外国の特許

中国に特許出願しようとした場合、どのようにすればよいのか?そして、中間処理はどうしたらよいのか?補正は厳しいのか?など気になることが多いと思います。

そして問題なのが、中国の特許制度についての情報が少ない、という点にあると思います。

その理由は、日本にいると中国の情報がなかなか入ってこない、中国語での記載、ということにあると思います。

私は、弁理士として中国に出願手続き、アクション(中間処理)のお仕事をさせて頂いたことがあります。そして、中国特有の問題点にぶちあたったりします。

この記事では、中国の特許制度について説明します。この記事を読むと中国の特許制度がわかります。

中国に特許出願しようとする場合、PCT出願又はパリルートで特許出願をします。中間処理は、日本語での訳を参照し対応します。中国では、プログラムの発明は特許にならない点、サポート要件や補正要件が厳しいのが特徴です。

特許制度の概要

中国では、特許は、専利(特許、実用新案、意匠)の中の1つとなります。そして、法律は、中国専利法になります。

第1国出願制度

中国国内で完成された発明の場合、まず第1国として中国に出願し、その後、秘密保持審査請求を提出し、優先権主張して日本に出願する必要があります。

もし、中国国内で完成された発明された場合であって、第1国として日本を先に出願し、この出願に基づき優先権主張をして中国で出願をしてた場合、権利(専利)が無効となってしまうので注意しましょう(中国専利法20条)。

なお、日本国内で完成された発明については、このような制限はありません。

出願方法

日本の出願に基づいて、パリルートによる出願(パリ条約に基づく優先権主張を行う出願)、PCT出願(国際出願)を行う必要があります。

複数国(アメリカ、中国など2つ以上)の国を視野にいれて出願する場合には、PCT出願が費用対効果としてよいと思いますが、国が中国の1か国のみ出願する場合、パリルートが良いと思います。

中国語の翻訳は、現地代理人に任せるのがベターかと思います。

出願時の注意点

中国で出願する場合は、以下の点は注意すべきでしょう。

プログラムの発明

プログラムの発明は特許にならない点に注意しましょう。中国出願時には、例えば、装置やシステムに直して出願する必要があります。

拡大先願

中国でも日本(日本の特許法第29条の2)と同様に拡大先願の規定がありますが、出願人同一でも適用されるので注意しましょう。

つまり、先願の専利(特許、実用新案、意匠)の出願書類に記載された発明・デザインと実質的に同一である場合、抵触出願となる(中国専利法22条2項、23条1項)ので注意しましょう。

マルチ・マルチのクレーム

マルチクレームに従属するマルチクレームは拒絶されるので注意しましょう。令和4年4月1日(2022年4月1日)以降、日本における特許出願及び実用新案出願において、マルチマルチクレームが拒絶対象(第36条第6項第4号(委任省令要件)違反)となります。そのため、日本と同様の対応で問題ありません。

具体例を用いて説明します。例えば、下記のような請求項がある場合について説明します。

【請求項1】A+B+Cを備える装置。

【請求項2】請求項1において、更にDを備える装置。

【請求項3】 請求項1又は2において、更にEを備える装置。

【請求項4】 請求項1~3のいずれかにおいて、更にFを備える装置。

しかし、中国では、請求項4はNGな記載です。

つまり、請求項3は、請求項1又は2に従属するマルチクレームです。また、請求項4は、請求項1~3のいずれかに従属するマルチクレームです。つまり、請求項4は、マルチクレームに従属するマルチクレームになります。

この場合、 【請求項4】 は、請求項1又は2において、更にFを備える装置。 など、修正する必要があります。

マルチ・マルチクレームを修正するタイミングは、中国出願時でもよいですが、アクション時(中間処理時)に行うことをおすすめします。なぜなら、中国は、かなり補正要件が厳しく、補正ができなくなる、補正がしずらくなるなどリスクが生じるからです。アクション時にマルチ・マルチクレームの補正をするということは、その分、マルチマルチでの拒絶理由をもらうことになりますが、あとで補正ができない事態に比べると、ダメージが少ない気がします。

サポート要件

中国では、サポート要件がかなり厳しい印象です。中国出願段階というよりも、日本での出願段階で、以下の点を意識して出願原稿を作成する必要があります。この対応は、日本の中間処理でも有効に働きます。

  • 上位概念をサポートする複数の実施例を記載する
  • 変形例を多く書く
  • 各クレームに対応する実施例を用意すべき。クレームの引き写しとともに、下位概念の記載を書く

アクション(中間処理)

中国のアクションは、日本の中間処理と似たような感じですが、異なる点は、補正の厳しさにあります。補正要件は想像以上に厳しいと思います。

もし、進歩性拒絶の場合は、従属請求項に限定する補正が有効です。また、明細書に書いていない文言補正は難しいので、明細書に書いてある文言そのままを引き写す、明細書のフレーズをそのまま引き写す方策がおすすめです。

中国では、日本や米国のように面接を行うことも得策ですが、この面接がなかなか設定できないようです。特に、進歩性拒絶の場合に対する面接は設定できない可能性が高いです。

なお、拒絶理由通知書は日本語の訳がありますが、この日本語の文章は読みやすいです。

拒絶理由対応時の補正の注意事項

中国では、1回又は2回ほど、拒絶理由が通知されます。3回目の拒絶理由もあるかもしれません。専利法では、2回目の拒絶理由を通知した後は、拒絶解消できない場合、拒絶査定ができるようです。

出願人は国務院特許行政部門が発行する審査意見通知書を受領した後特許出願書類を補正する場合は、通知書に指摘された欠陥のみに対して、補正を行わなければならない。(中国特許法実施細則第51条

中国では、2回目以降の拒絶理由のみならず、1回目の拒絶理由においても、

・補正前の特許請求の範囲において言及されていない技術的特徴を有する独立請求項の追加を禁止

・補正前の特許請求の範囲に言及されていない技術的特徴を有する従属請求項の追加を禁止

になっています。最初の拒絶理由の応答時に、もし、次の拒絶理由に備えて独立請求項で進歩性がなくても、従属請求項に進歩性があるようなクレームを追加作成したいところですが、日本やUSのような対応ができません。これが非常にやりにくい。出願時にある程度進歩性がある請求項を加えるのが得策と思う。

拒絶査定後

拒絶査定になった場合、日本と同じように、拒絶査定不服審判を請求することができます。中国では、復審請求と言うようです。日本と同じように補正の制限もなされます(拒絶査定不服審判請求時において、カテゴリー変更禁止のようです)。詳しくは、審査指南第4部分第2章4.2に記載されています。また、日本と同じように前置審査もあるようです。

まとめ

中国では、以下の点に注意する

  • 第1国出願制度に注意する
  • 中国はサポート要件が厳しい
  • マルチ・マルチの修正が必要だが、アクション時に行うことをおすすめ
  • 中国は補正要件が厳しい