令和3年度の特許法等の改正について要点を知りたいと思いませんか?
私は弁理士として10年以上実務をしておりますが、正直、毎年の改正法が整理できておりません。そこで、まずは、令和3年度の特許法等の改正についてまとめました。この記事を読めば、令和3年度の特許法等の改正点が簡単にわかります。
まず、結論を申し上げると、令和3年度特許法等の改正点は、審判口頭審理のオンライン化、海外からの模倣品輸入に対し、国内の持ち込む行為を商標権等侵害として位置付けた点、特許権侵害訴訟における第三者意見募集制度を導入した点、特許料等が見直された点、等にあります。その他、細かい改正点もありますので説明します。
では、早速改正事項を説明します。
審判口頭審理のオンライン化
特許の無効審判等は、従来、審判廷に出頭して対面で口頭審理を行っておりました。審判長の判断で、ウェブ会議システムでも可能となるように改正されました。
当事者同士が、テレビスクリーンで対面されるようです
海外から模倣品流入への規制強化
増大する個人使用目的の模倣品輸入に対し、海外事業者が模倣品を郵送等により国内に持ち込む行為を商標権、意匠権の侵害として位置づけられます。
例えば、日本の事業者が、個人に販売することを目的に、海外の事業者から、日本に有名な商標(例えば、有名なブランドの商標を付した商品)を輸入したとします。いままでは、輸入や販売(譲渡)した段階で、商標権侵害としていましたが、改正後は、日本に郵送で持ち込んだ場合に、商標権侵害となります。
商標権や意匠権の権利保護が見直されました。
特許権侵害訴訟における第三者意見募集制度の導入
特許権侵害訴訟において、裁判所が広く第三者から意見を募集できる制度を導入しました。例えば、社会的影響の大きい事件において、裁判所が幅広い意見を踏まえて判断できるよう、当事者の証拠収集を保管します。弁理士は、「第三者意見募集制度」において、相談に応じることが可能になります。
アメリカのアミカスブリーフ制度のような制度です。アップル対サムスン訴訟(知財高判平成26年5月16日(平成25年(ネ)第10043号))においては、当時の現行法の枠組み内で、第三者から意見を募集する試みが行われ、国内外から多数の意見が寄せられたようです。
印紙予納の廃止になり、料金支払いがクレジットカード可能になる
特許料等の支払い方法について、口座振替等による予納(印紙予納)が廃止になり、窓口でのクレジットカード支払い等が可能になります。
意匠・商標国際出願手続きのデジタル化
意匠・商標の国際出願の登録査定の通知等について、郵送に代えて、国際機関を経由した電子送付を可能になります。
災害等の理由による手続期間徒過後の割増料金免除
感染症拡大や災害等の理由によって特許料の納付期間を徒過した場合に、相応の期間内において割増料金の納付を免除することになりました。
訂正審判等における通常実施権者の承諾が不要になります
特許権の訂正等における通常実施権者の承諾が不要になります。
特許権等の権利回復要件が緩和されます
手続期間の徒過により特許権等が消滅した場合に、権利を回復できる要件を緩和します。
特許料等の料金が改定(一部の料金が高くなります)
特許料等(特許、実用新案、意匠、商標)の一部料金が高くなります。
弁理士制度の見直し
- 弁理士を名乗って行うことができる業務として、農林水産知財業務を追加します。
- 法人名称が「弁理士法人」に変更されます
- 1人法人制度が導入されます